更新日: 2023年11月11日

令和3年度以降における行政書士の懲戒、処分内容

行政書士は難関試験を突破した優秀な士業です。

しかし、立派な肩書きのある行政書士でも懲戒処分になることがあります。

懲戒処分の種類

  • 戒告
    戒告とは、つまり、注意のことです。
  • 業務停止
    2年以内の業務の停止です。業務停止期間が明ければ、業務を再開できますが、取引先が失われていたりと、完全復活するのは難しいです。
  • 業務の禁止
    2年以内の業務の禁止です。業務停止より厳しい処分であり、行政書士登録が失われます。業務禁止期間が明ければ、再登録ができますが、業務停止と同じく、完全復活は厳しいでしょう。

懲戒処分はどんな場合になるか

  1. 業務の誠実履行義務違反
    当然の義務でありますが、行政書士は、業務を誠実に履行しなければなりません。
  2. 報酬の額の掲示義務違反
    報酬額は掲示しなければなりません。必ずしも、ホームページに掲示する必要はないですが、ホームページに料金表を載せる行政書士は、こういった義務のことも意識しています。
  3. 依頼応諾義務違反
    行政書士は、依頼に応じる義務があります。これは専門職である行政書士が依頼を断ったら、誰がやるんだ!という話になってしまうからです。
  4. 守秘義務違反
    当然の義務です。

他にも、業務を補助者に任せっきりの場合も懲戒処分を喰らいます。これは程度によります。補助者に任せたらダメなわけではないですが、行政書士という資格持ちが業務に関わらないほど、補助者に任せると懲戒処分になります。

行政書士の懲戒条文

行政書士及び行政書士法人の懲戒
(1) 行政書士が行政書士法若しくは行政書士法に基づく命令,規則その他都道府県知事の処分に違反した場合,又は行政書士たるにふさわしくない重大な飛行があった場合,都道府県知事は,当該行政書士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は業務の禁止の処分をすることができます(行政書士法14条)。
行政書士法人が行政書士法又は行政書士法に基づく命令,規則その他都道府県知事の処分に違反した場合,又は運営が著しく不当と認められる場合,戒告,2年以内の業務の全部又は一部の停止,解散の処分をすることができます(行政書士法14条の2)。
(2) 何人も,行政書士又は行政書士法人について懲戒事由に該当する事実があると思料するときは,当該行政書士又は当該行政書士法人の事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し,当該事実を通知し,適当な措置をとることを求めることができます行政書士法14条の3第1項)。

本当に懲戒処分になる事例はあるのか

本当に懲戒処分になる事例はあります。

しかも、結構な数があります。

例えば、以下のような事例があります。各行政書士会の懲戒処分事例を見れば、毎月レベルで誰かしらの行政書士に懲戒処分がされています。

令和4年3月29日 戒告

新潟県知事がした懲戒処分

・行政書士の信用又は品位を害する行為があったこと(法第10条違反)
自身が行政書士の業務として受注した諸申請手続業務の一部を測量会社に依頼した。測量会社は当該業務を履行し、請求書により当該行政書士に当該業務の代金を請求したが、当該行政書士は、代金支払の催促に対して代金支払を約束するだけで、以後、当該業務の代金を一切支払っていないことが認められた。

・日本行政書士会連合会に変更登録を申請していないこと(法第6条の4及び法第13条違反)少なくとも令和3年2月以降、事務所の所在地を変更したにもかかわらず、連合会に対して変更登録の申請を行っていないことが認められた。

・業務に関する帳簿を作成していないこと(法第9条第1項違反)行政書士としての業務開始以降、業務に関する帳簿を作成していないことが認められた。

令和4年2月28日 2月の業務の停止

兵庫県知事がした懲戒処分

当該行政書士は、大阪府公安委員会に対し、実際の経営者ではない者を名義人として提出した行為により、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反の幇助を行ったものとして、罰金50万円の刑が確定した。

当該行為は、行政書士法第10条に規定する行政書士の信用又は品位を害する行為に該当する。

令和4年1月14日 2年間の業務の停止

栃木県知事がした懲戒処分

(1)次の事実は、行政書士の品位及び信用を害するものであり、法第10条に違反する。
ア.被処分者が9枚の職務上請求書を使用し、偽りその他不正の手段により、戸籍謄本等(合計21通)の交付を受けたこと
イ.被処分者が、平成272015)年4月9日以降、調査会社を経由して受任した業務に関し、調査目的に使用されるおそれが高いにもかかわらず、調査目的に使用されないことを確認せずに、職務上請求書を使用して得た情報を提供したこと

(2)被処分者が、過去2年の間、業務に関する帳簿に法定記載事項を記載していなかったことは、法第9条に違反する。

(3)被処分者が、過去5年の間、領収書の作成をしていなかったことは、行政書士法施行規則第10条に違反する。

令和3年12月16日 1年間の業務の停止

神奈川県知事がした懲戒処分

端緒:市からの情報提供
ア.被処分者は、事務所開設時の平成23年から10年の長期にわたり、自ら書類を作成せず補助者が作成した書類の内容を確認しないまま行政書士印を押印して官公署に提出していたほか、週5日の営業日のうち2日しか事務所に出勤しない、顧客への対応(営業・連絡・助言等)を行わないなど、補助者に業務を任せきりにし、「名義貸し」ともいえるような不適切な事務所運営を続けていた。
イ.被処分者は、補助者による文書の虚偽記載及び偽造を見抜けず、当該文書を添付した申請書・届出書を少なくとも3件官公署に提出した。これにより、顧客が入札手続への参加の機会を逸するとともに、追加費用の負担が生じることとなった。

これらの事実は、行政書士法第14条に規定する「行政書士たるにふさわしくない重大な非行」に該当するものであり、同条第2号の懲戒処分事由に該当する。

上記事例の引用は全て総務省発表の懲戒処分からの引用です。

まとめ

行政書士試験に行政書士法はほぼ出題されません。

よって、懲戒処分について知識がほとんどない行政書士がいることがあります。

とはいえ、行政書士以前に、常識的に考えれば懲戒処分を喰らうことはないと思うので、行政書士としての品位を持って業務にあたりましょう。